本紙でもすでに伝えているが、10月16日に青森県で第65回新聞大会が開催された。その中で行われたパネルディスカッションでの新聞各社トップの発言について少し触れようと思う。パネルディスカッションでは、消費税問題、読者の新聞離れなどについても議論されたわけだが、今回はデジタル化や電子新聞に対する各社の立ち位置について注目してみたい。各社代表者の発言を簡単にまとめると下記の通りだ。
中日新聞・小出社長
「ネットのせいだとか他人のせいにしてきたが『新聞離れ』は紙面が面白くないから離れた。新聞が時代に合っていないのでは。」
日経新聞・長谷部常務取締役
「日経新聞電子版は発行から3年で部数は23万部程度。紙が根幹であることは変わらないが、多様なコンテンツおよび提供方法を考える必要がある。」
朝日新聞・木村社長
「(電子版導入は前社長が決定したことだが)押し付けられた私は何をすればいいのかと言いたい。朝日デジタルの会員はいまだ6万に達していないが、来年には10万人に到達させたい。デジタルはオプションと考える。」
読売新聞・白石社長
「読売新聞は紙の新聞に両足を置いているが、若い人が利用するデジタルデバイスも無視できない。スマートフォン向けにサービスも提供しているが新聞購読者に限定したサービスだ。」
それぞれの発言を見ても分かる通り、昨年度の新聞大会での「これからはデジタル」といった雰囲気から一変、改めて紙の新聞に力を入れていくといった 意見が大半を占めた。
なぜたった1年足らずで、再び紙中心路線へ切り替える新聞社が多いのか。話を聞いていると「デジタル版、電子新聞はお金にならないから」ということらしい。もちろん日経新聞のように、紙、デジタルともにコンテンツを充実化し提供方法も検討していくとする、読者、ユーザー目線の意見も出ていたが、やはり利益中心の考えが強いのか。 軽減税率を訴える際には、新聞の「公共性」について熱心に訴えていたが、その声はどこに行ってしまったのか。
そもそも、数年試してみただけで見切りをつけるというのは短気すぎるのではないだろうか。紙の新聞だって何年、何十年とかかってようやく数百万部、数千万部まで読者を広げたのではないか。もちろん、さまざまなデジタルデバイスが発売されるなど変化の激しい時代ではある。しかしデジタル、WEBサービスと言えど、そんなに早く結果が出せるものは少ない。今、新聞社のトップに必要なのは、自らの固定概念を押し付けるのではく、新しいサービス、新しい取り組みを長い目でみてやることではないだろうか。
(編集部・F)